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絵置き場>>文
スケーターズワルツ2
「じゃあ、俺、ひとりで滑ってきますからカカシ先生はそこら辺で待っててくださいね」
カカシに声をかけてイルカがすういっと一足滑り出した時、カカシの声が背後から聞こえた。
「ま、ま待って! イルカ先生、置いていかないでー!!」
……なんだ、いつもどおりのカカシ先生じゃないか、と、振り向いてイルカは唖然としてしまった。
あの写輪眼の持ち主にして上忍のカカシが氷の上に突っ伏しているではないか。
ちらりと(わざとじゃないだろうな…?)という疑いが脳裏をよぎったが、どうも違うらしい。
「カカシ先生、大丈夫ですか!」
イルカが傍に寄ってもまだ立ち上がる気配が無い。
「カカシ先生、カカシ先生?!」
「…………」
心配になって背をゆすぶるとずずぅっと鼻をすする音がする。どうやら無事らしい。
「……こんな姿、イルカ先生に見られたくなかったでーすよぉ。うぅ…」
カカシの語尾が涙っぽかった。
「も、もしかしてカカシ先生……あの…」
「オレ、スケートするの、今日が初めてなんです」
「え?」
疑問符をあげながらイルカはあっ、と思った。忘れていた自分を少し後悔した。年が近いのに子供の頃にカカシと一緒に遊んだ覚えは全く無い。この人は遊びとは無縁の世界で育ってきた人なのだということを。
顔を上げるのが恥ずかしいのか、カカシはまだ氷の上に突っ伏したままだ。僅かに見える耳が赤くなっているのは寒さの所為だけではないだろう。
自分で起き上がるつもりのないカカシをイルカは滑る氷上で苦労しながら立ち上がらせると、すっかり濡れてしまったカカシの服を拭きながらカカシの顔を覗き込んだ。
「滑ったことがないのなら言ってくれればよかったのに。恥ずかしいことじゃないですよ?」
その言葉聞くとカカシは急にくわっとしてイルカに向きなおった。
「でもでもでもでも! イルカせんせーはオレがクルクルーとかパァーとかすごいカッコよく滑れると思ってたでしょ! オレのこと、氷上の貴公子とか、スケートの王子様と思ってたでしょ!」
「いや…それは」
「やっぱりっ! うぅ、イルカせんせーはかっこいいはたけカカシが好きなんだ! かっこ悪いはたけカカシじゃダメなんだー!」
「そういうワケでは……」
「じゃあ、どういうワケっ?! ねぇ、イルカせんせー! ねぇ!」
どう返事をしたらいいものかとカカシを見上げるイルカの視界にひと目で初心者とわかる巨漢が飛び込んできた。
このままではカカシにぶつかってしまう…!
「カカシ先生!」
とっさにカカシを庇う腕を伸ばす。
避け切れなければ自分がクッションになるまでだ。
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